·岡本 龍一 (Internnect CEO)
7,890行の自作AIオーケストレーターを捨てて、OpenClawに乗り換えた話
OpenClawAI TACTClaude CodeAIエージェント経営者ブログ
これは、AIで開発を加速しようとした経営者が、気づかないうちに車輪の再発明をしていた話です。
結論から言います。7,890行のコードを書いて、28万スターのOSSの劣化版を作っていました。
何を作ろうとしていたか
Internnectでは複数のプロダクトを同時開発しています。Claude Codeをフル活用しているのですが、プロジェクトが増えるにつれて「どのプロジェクトで何が動いていて、何が終わったのか」を把握するのが難しくなりました。
そこで作ったのが「AI TACT」。Claude Codeのセッションを一元管理するオーケストレーターです。
AI TACTで実装したもの
- •タスクの自動振り分け — 指示を投げると、AIが最適なプロジェクトにルーティング
- •Kanbanボード — 実行中・キュー・完了のタスクをリアルタイム表示
- •5タブのモバイル対応UI — スマホからもタスク管理
- •Slack通知 — タスクの開始と完了を自動通知
- •Morning Brief — 毎朝6時に全プロジェクトの状況をAIが分析・報告
- •Knowledge Graph — プロジェクト横断でナレッジを抽出・検索
- •ローカルセッション検出 — ターミナルで直接動かしたClaude Codeも自動認識
Express + WebSocket + Anthropic SDKで構築。server.jsは7,890行に膨れ上がりました。
正直、めちゃくちゃ便利でした。自分の作業を全部見える化できて、スマホからもタスクを投げられる。開発効率は確実に上がりました。
「OpenClaw」との出会い — というか再会
AI TACTのコードベースには「openclaw」というディレクトリがありました。外部連携のブリッジサーバーとして自作したもので、名前だけ本家OpenClawから借りていました。
ある日、Claudeに「OpenClawって本家はもっとできること多くない?」と聞きました。これが最初ではありません。過去にも何度か同じ質問をしていました。
でも毎回、プロジェクト内のコードだけを見て「既に統合済みですね」という回答が返ってきていました。
本家を調べて愕然とした
今回、ようやくWeb検索をして本家OpenClawの最新仕様を確認しました。
GitHubスター28万。100以上のAgentSkill。Slack、LINE、WhatsApp、Discord、Telegram含む20以上のプラットフォーム対応。ブラウザ自動操作。メモリホットスワップ。GPT-5.4対応。NVIDIAがエンタープライズ版「NemoClaw」を発表。
そして極めつけ: OpenClawエージェント「Felix」が自律的にプロダクトをリリースし、1週間で$3,500の売上を生み、スキルマーケットプレイスで累計$71,300を稼いでいる。
僕が7,890行かけて実装した機能のほぼ全部が、OpenClawでは「設定ファイル数行」で実現できました。
自作コードとOpenClawの比較
| 機能 | 自作 (AI TACT) | OpenClaw |
|---|---|---|
| マルチプラットフォーム対応 | Slackのみ(手動実装) | 20+プラットフォーム標準対応 |
| タスク実行 | Claude Code CLIのspawn管理 | 100+ AgentSkill + シェル実行 |
| ブラウザ操作 | 未実装 | DevToolsアタッチ対応 |
| ダッシュボード | 自作HTML(3,647行) | Dashboard v2 標準搭載 |
| メモリ管理 | JSON手動保存 | ホットスワップ対応 |
| セキュリティ | Cookie認証のみ | CVE対応・40+脆弱性修正済 |
| コミュニティ | 自分1人 | 28万スター・OSS財団運営 |
なぜ気づけなかったのか
3つの原因がありました。
1つ目は、「動いているものを疑わなかった」こと。AI TACTは実際に便利に使えていたので、外を見る動機が薄かった。
2つ目は、AIアシスタント(Claude Code)が既存コードだけを見て判断していたこと。プロジェクト内にopenclaw/ディレクトリがある→統合済み、という短絡的な判断を毎回繰り返していました。
3つ目は、自分自身が「自分で作った方が早い」という思い込みに囚われていたこと。経営者としてスピードを優先するあまり、既存のエコシステムを調査する時間を「遅い」と感じていました。
学んだこと
- •AIツールを使う前に、そのツールの本家を必ず調べる — 名前だけ借りて自作すると、コミュニティの恩恵をゼロにする
- •「動いている」と「最適」は違う — 自作ツールが便利でも、10倍良いものが無料で存在する可能性がある
- •AIに聞くだけでは足りない — AIもプロジェクト内のコードに引っ張られる。「外の世界はどうなってる?」と明示的に聞く必要がある
- •経営者こそエコシステムを見るべき — 実装に没頭すると視野が狭くなる。月に1回は「これ、もっと良い方法ないか?」と立ち止まる
これからやること
AI TACTのserver.js 7,890行は役目を終えます。
本家OpenClaw (v2026.3.13) を導入し、AI TACTのコア機能(Claude Code CLIの管理)をOpenClawのSkillとして移植します。これまでのタスク履歴・プロジェクト設定も移行します。
7,890行の自作コードが、おそらく数十行のSkill定義に置き換わるでしょう。
でも、この遠回りは無駄ではなかったと思っています。自分で作ったからこそ「何が必要で、何が足りないか」を肌で理解できた。OpenClawを導入する際も、その理解があるから最適な設定ができるはずです。
……と自分に言い聞かせています。
最後に
もし今、AIツールの管理画面を自作しようとしている人がいたら、まずOpenClawを試してください。
28万人が使っているツールを、1人で超えるのは無理です。
それでも自作したいなら、せめて本家を触ってから。そうすれば「何を自作する価値があるのか」が見えてきます。僕みたいに7,890行書いてから気づくよりも、ずっと賢いやり方です。
R
岡本 龍一
Internnect CEO
株式会社インターネクト代表。AI駆動開発でプロダクトを量産する経営者。Claude Codeのヘビーユーザー。失敗談を書くのが好き。